宇城市

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宇城市（うきし）は、熊本県の中央部、九州本土から天草諸島へと続く宇土半島の西半分から南側、及び八代海（不知火海）に浮かぶ「花の島」としても知られる戸馳島（とばせじま）などから構成され、東シナ海と有明海を結ぶ海の回廊に面した風光明媚な都市です。2005年1月15日に、旧宇土郡の三角町（みすみまち）、不知火町（しらぬひまち）と、旧下益城郡の松橋町（まつばせまち）、小川町（おがわまち）、豊野町（とよのまち）という、それぞれに独自の歴史と文化を持つ5つの町が合併して誕生しました。その歴史は古く、市内には大田黒古墳群をはじめとする数多くの古墳や遺跡が点在し、古代から人々がこの地に暮らしを営んできたことを物語っています。特に近代においては、三角町にある三角西港（みすみにしこう）が日本の近代化に重要な役割を果たしました。この港は、明治政府の殖産興業政策の一環として、オランダ人技師ローウェンホルスト・ムルドルによって設計され、1887年（明治20年）に開港した日本に現存する唯一完全な姿を留める明治三大築港の一つであり、当時の最先端技術を駆使して築かれた精緻な石積みの埠頭や排水路、そして風格ある洋館群などの歴史的建造物が奇跡的に良好な状態で保存されており、その歴史的価値の高さから2015年には「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産の一つとしてユネスコの世界文化遺産に登録され、国内外から多くの観光客が訪れる熊本県を代表する歴史的観光地となっています。また、市名の一部にもなっている「不知火（しらぬい）」は、旧暦8月1日前後の風のない夜に八代海上に無数の光が揺らめく神秘的な蜃気楼現象であり、古くから景行天皇の伝説や多くの和歌に詠まれ、人々の畏敬の念を集めてきた宇城市を象徴する自然現象の一つです。文化面では、市内各地に江戸時代から明治時代にかけて架けられた美しいアーチを持つ石橋が数多く残り、地域の石橋文化を形成しているほか、建築家・葉祥栄氏設計による三角港フェリーターミナル「海のピラミッド」はその斬新でシンボリックなデザインで知られています。産業においては、温暖な気候と肥沃な土地を活かした農業が基幹産業の一つであり、糖度の高いメロンや「ひのしずく」などのブランドイチゴ、デコポン（不知火）をはじめとする多種多様な柑橘類、ブドウやナシといった果物、そして全国有数の生産量を誇るショウガや、トマト、ナスなどの野菜、さらにはランやカスミソウなどの花きの栽培が盛んで、県内外に高品質な農産物を供給しています。八代海に面した地域では漁業も営まれ、アサリやクルマエビ、タチウオなどが水揚げされます。観光業も盛んで、世界遺産・三角西港を核とした歴史観光に加え、一年を通じて花々が咲き誇る戸馳島のフラワーアイランドとしての魅力、道の駅不知火を中心とした物産販売や温泉施設、岡岳公園の桜や各種フルーツ狩りなどが楽しめます。交通の面では、JR鹿児島本線と天草への玄関口となる観光列車「A列車で行こう」も走る三角線（あまくさみすみ線）が通り、九州自動車道の松橋インターチェンジが市内にあるほか、国道3号、57号、218号、266号といった主要幹線道路が交差し、熊本都市圏や天草方面、県南地域へのアクセスが良い交通の要衝となっています。2016年の熊本地震では宇城市も大きな被害を受けましたが、市民生活の再建と地域経済の活性化に向けた復興への取り組みが着実に進められています。このように豊かな自然、世界に誇る歴史遺産、多彩で高品質な農水産物、そして地域に根差した文化が融合し、未来へのさらなる発展を目指す宇城市の2025年時点における国立社会保障・人口問題研究所による推計総人口は52,491人です。