水俣市

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水俣市（みなまたし）は、熊本県の最南端に位置し鹿児島県に境を接し、風光明媚なリアス式海岸が続く八代海（不知火海）に面した、緑豊かな山々に抱かれた都市です。かつては化学メーカーであるチッソ株式会社の企業城下町として発展しましたが、1950年代に同社工場から排出されたメチル水銀化合物が原因で、世界的に知られる公害病「水俣病」が発生し、多くの尊い命が奪われ、人々の健康や生活、そして地域の自然環境に深刻かつ長期的な被害をもたらし、地域社会にも深い亀裂を生みました。この未曾有の公害経験という重い歴史を背負いながらも、その悲劇を二度と繰り返さないという強い決意のもと、水俣病の教訓を国内外に発信し続けるとともに、市民、企業、行政が一丸となって環境の再生と持続可能な地域社会の構築に長年取り組んできました。その結果、1990年には水俣湾のヘドロ処理事業が完了し、その後も徹底した環境保全活動や資源循環型社会の形成を推進し、2008年には国から「環境モデル都市」に、さらに2011年には「環境未来都市」にも選定され、環境を大切にするまちづくりは国内外から高い評価を受けています。具体的な取り組みとしては、全国でもトップクラスとされる20種類以上にも及ぶ徹底した家庭ごみの分別収集や、農薬や化学肥料の使用を極力抑えた安全・安心な農林水産物を認定する「環境マイスター制度」、そして水俣病の歴史と教訓、環境問題について深く学ぶことができる「水俣市立水俣病資料館・情報センター」や「熊本県環境センター」の設置運営、かつて汚染された水俣湾の埋立地に整備され、市民の憩いの場であり環境学習の拠点ともなっている広大な「エコパーク水俣」などが挙げられます。産業面では、かつての化学工業依存から脱却し、電子部品や金属加工などの製造業のほか、環境関連産業の育成を目指すエコタウン事業が進められています。また、温暖な気候を活かした農業も盛んで、日本における甘夏みかん栽培発祥の地の一つであり、現在も多くの柑橘類が栽培されているほか、辛みが少なく生食に適したタマネギ「サラたまちゃん」は特産品として全国的な知名度を誇ります。漁業も行われ、不知火海の豊かな海の幸が水揚げされます。観光においては、不知火海を一望する絶景とタチウオ料理が名物の「湯の児温泉（ゆのこおんせん）」や、山あいの静かで素朴な風情が魅力の「湯の鶴温泉（ゆのつるおんせん）」といった温泉地があり、また明治の文豪である徳富蘇峰・蘆花兄弟の生家や記念文学館も訪れることができます。エコパーク水俣内にある親水公園は「恋人の聖地」にも認定されています。このように、水俣病という悲痛な経験を乗り越え、その教訓を未来への糧として環境と共生する持続可能な地域社会の実現を目指して力強く歩み続ける水俣市の2025年時点における国立社会保障・人口問題研究所による推計総人口は20,751人です。